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採用

動物病院の採用ミスマッチを防ぐ|採用サイトは合う人を選ぶ道具

(更新:)約11分で読めます

獣医師資格を持つデザイナーが書いています

「採用サイトを作っても、人が来るとは限らない」「数は多くなくていいから、うちに合う良い人に来てほしい」。動物病院の院長先生から採用の相談を受けると、こうした声をよくうかがいます。

採用の悩みは「人が来ない」だけではありません。やっと入ってくれた人が「思っていた職場と違った」と数か月で辞めてしまう、つまり採用のミスマッチ(病院と働く人の考え方や期待が合わないこと)も、同じくらい院長先生を悩ませています。

この記事で分かること

  • 動物病院の採用でミスマッチが起きる理由と、採用サイトが果たせる役割
  • 理念・合わない人・仕事の実際(忙しさや教育)を、採用サイトにどう書くか
  • 見学・面接での確かめ方と、定着(入った人が長く働き続けること)とのつながり

動物病院の採用でミスマッチが起きるのはなぜ?

採用のミスマッチは、求職者が入職前に思い描いていた職場と、入職後の実際の職場がずれているときに起きます。ずれの原因の多くは、求人票や採用ページに「良いところ」と「条件」しか書かれておらず、求職者が自分に合うかどうかを判断する材料がないことです。

2025年5月に、人材紹介サービスに登録する動物看護師192名を対象に行われた就業実態調査では、転職経験のある人(106名)の転職理由の1位は「職場の人間関係」(49.1%)で、「給与・待遇への不満」(36.8%)を上回りました。今の職場への不満でも、「業務量・負担」(31.8%)、「勤務時間・休日」(28.1%)が挙がっています。人間関係や忙しさは、条件の表だけでは伝わりにくい部分です。

動物病院に限った数字ではありませんが、厚生労働省の調べでは、令和4年3月に大学を卒業して就職した人のうち、3年以内に辞めた人は33.8%でした。事業所の規模が5〜29人のところでは52.0%と、規模が小さいほど高くなっています。スタッフが数人から数十人の動物病院は、1人が辞めたときの影響が大きい規模です。

ミスマッチで病院が失うもの

ミスマッチで失うのは、採用にかけた費用だけではありません。

  • 求人の掲載料や紹介会社の手数料、面接や見学に使った時間
  • 教えた先輩スタッフの時間と、教えたことが病院に残らないこと
  • 欠員を埋めるための残業と、残ったスタッフの疲れ
  • 「また人が辞めた」という院内の空気

だからこそ、応募の数を増やす前に「入ってから合わなかった」を減らすことが、採用全体の負担を軽くする近道になります。

採用サイトは「応募を増やす」ための道具ではないの?

採用サイトは応募の数を増やすだけの道具ではなく、病院に合う人を選びやすくする「ふるい」の役割を持っています。採用サイトを作れば応募が増える、というわけではありません。採用サイトが大きく役に立つのは、合う人と合わない人を、応募の前に分けやすくするところです。

求人サイトの原稿は文字数や項目が決まっていて、どの病院も似た書き方になります。自院の採用サイトなら、病院の考え方や働き方を、病院の言葉で詳しく書けます。求職者はそれを読んで「自分に合いそうか」を応募の前に考えます。合わないと感じた人は応募しないので、応募の数は大きく増えなくても、合う人の割合は上がりやすくなります。

当社がご相談を受けた中には、こんな例がありました。

  • ある病院では、休みの多さが大きな魅力でした。ただ、院長先生は「休みだけを求める人が来ると困る」と考えていました。そこで採用サイトでは、休みを「研修や自分の勉強に時間を使える」という文脈で見せることにしました。同じ休みでも、成長したい人に届く書き方にしたわけです
  • 別の病院では、新卒向けの色を強く打ち出した採用ページにしたところ、経験のある中途の獣医師が応募しづらくなっていました。だれに向けて書くかで、来る人が変わるという例です

働きやすさは、採用サイトで伝えたい魅力のひとつです。ただ、働きやすさだけを前に出すと、働きやすさだけを求める人も集まります。「何のために働きやすくしているのか」まで書くと、病院が大切にしていることに共感する人が残ります。

合う人を選ぶ採用の流れ:採用サイトで伝える→求職者が自分で選ぶ→見学・面接で確かめる→入職後に話を聞く。入る前と入った後のずれが小さくなり、「合わなかった」での退職を防ぎやすくなる

採用サイトに「合わない人」まで書いていいの?

書いて構いません。むしろ、病院が大切にしていることと、それに合わない働き方をはっきり書くことが、ミスマッチを防ぐ近道です。「どんな人でも歓迎します」という採用ページは、だれにとっても自分のことだと感じにくく、合わない人も迷わず応募してきます。

書いておきたい3つのこと

採用サイトには、次の3つをそろえて書くと、求職者が自分と比べやすくなります。

書くこと 中身 書き方の例
理念・大切にしていること 診療の考え方、飼い主様との向き合い方、チームの動き方 「飼い主様の話をきちんと聞く診療を大切にしています」
来てほしい人 経験の有無、長く働きたいか、どんなことに力を入れたい人か 「長く働き、ゆくゆくは病院の中心を担いたい方」
合わないかもしれない人 病院の考え方と合いにくい働き方や期待 「決まった仕事だけを決まった時間でこなしたい方には、合わないかもしれません」

理念や強みがまだ言葉になっていない場合は、先にそこから整理します。進め方は「動物病院の経営理念と強みの見つけ方」でご紹介しています。

動物病院の経営理念と強みの見つけ方 本当の価値を言葉にする方法良い診療をしていても、その価値は言葉にしないと伝わりません。獣医師資格を持つデザイナーが、動物病院の経営理念と強みを、院長・スタッフ・飼い主様への聞き取りから見つけ、ホームページや採用、院内で使う方法を解説します。connectcreate.jp/vdesign/column/animal-hospital-philosophy-strengths

「合わない人」を書くときの注意

合わない人を書くときは、人を否定する言い方ではなく、「病院の働き方と合いにくい」という書き方にします。

  • 「〜な人はお断り」ではなく「〜を望む方には、合わないかもしれません」と書く
  • 性別・年齢・家族のことなど、本人の努力では変えられないことや、仕事に関係のないことで線を引かない
  • 理念とつなげて、なぜ合いにくいのかを一言添える(例:「チームで助け合う病院なので」)

こう書くと、合わない人には静かに伝わり、合う人には「ここは自分のための病院だ」と感じてもらえます。

忙しさや教育の実際は、正直に載せるべき?

はい、正直に載せたほうがミスマッチは減ります。良いところだけを見て入った人ほど、忙しさや教育の実際とのずれに驚き、「聞いていた話と違う」と感じやすくなるからです。良い面も大変な面もありのまま伝える採用の考え方は、RJP(リアリスティック・ジョブ・プレビュー:仕事の実際を前もって見せること)と呼ばれます。

載せておきたい「仕事の実際」

  • 1日の流れ:落ち着いた日だけでなく、忙しい日の流れも書く
  • 忙しさ:混む曜日や時間帯、残業がどのくらいあるか、夜間や休日の対応があるか
  • 教育:入職後の最初の数か月で何を覚えるか、だれが教えるか、独り立ちまでの目安
  • 任される時期:手術や入院管理、後輩の指導などを、いつごろから任されるか
  • 休み:シフトの組み方、有給休暇の取りやすさ

職種ごとに知りたいことは違います。獣医師・愛玩動物看護師・受付やトリマーで分けた項目は「動物病院の採用ページに載せるべき項目」にまとめています。

大変な面は「支える仕組み」とセットで書く

忙しさや大変さを書くときは、それを支える仕組みとセットにすると、求職者は怖がるのではなく、納得して判断できます。

  • 「夕方は混み合います。そのぶん、受付と看護師で役割を分けて回しています」
  • 「最初の3か月は覚えることが多いです。毎週、先輩と振り返る時間をとっています」

大変な面を隠さない病院は、求職者から見て「入ってからも本当のことを話してくれる病院」に映ります。その信頼が、応募の質を上げることにつながります。

以下は載せるのをためらいやすい「仕事の実際」の候補です。 ・夜遅くまで残業になる日があること ・夕方や休み明けの混み具合 ・ワークライフバランスより成長を大切にする方針(「働く魅力」からワークライフバランスの項目を外した病院がありました) ・独り立ちまでにかかる期間の目安

見学・面接では、何をどう確かめればいい?

見学と面接は、採用サイトに書いたことが本当かどうかを、求職者と病院の両方が確かめる場にします。サイトで伝えたことと、見学で見た現場が一致していれば、求職者は安心して入職を決められます。ずれていれば、入職前に気づけます。

見学で、求職者に見てもらうこと

  • 忙しい時間帯の様子も見てもらう(落ち着いた時間だけ見せると、入職後にずれが出やすい)
  • 院長先生だけでなく、同じ職種のスタッフと話す時間をとる
  • 教育の進め方や1日の流れを、採用サイトと同じ言葉で説明する
  • 見学のあとに「サイトで読んだことと違うところはありましたか」と聞いてみる

面接で、病院が確かめること

面接では、病院が大切にしていることと、求職者が仕事で大切にしていることが重なるかを、過去の経験を通して聞きます。

  1. 「前の職場(実習先)で、仕事で大切にしていたことは何ですか」
  2. 「忙しい日に、チームの中でどんな動き方をしていましたか」
  3. 「入職して最初の1年で、どんなことができるようになりたいですか」
  4. 「当院の採用サイトで、合うと思ったところ・不安に思ったところはどこですか」

気をつけたいのは、厚生労働省が示す「公正な採用選考」の考え方です。家族のこと、生まれた場所、宗教、人生観や生活信条など、本人に責任のないことや本来自由であるべきことは、面接で聞かないことが求められています。価値観が合うかは、人生観ではなく「仕事の進め方や経験」を通して確かめるのが安全です。

面接には院長先生だけでなく、一緒に働くスタッフにも入ってもらうと、現場から見た相性も分かります。

ミスマッチを減らすと、定着はどう変わる?

入る前に聞いていた話と、入ってからの実際のずれが小さいほど、「思っていたのと違った」という理由で辞める人を減らしやすくなります。採用サイトで合う人を選ぶことは、定着の最初の一歩でもあります。

ただし、採用サイトだけで定着がすべて決まるわけではありません。入職後の教育や人間関係、業務の負担の偏りも、働き続けるかどうかに影響します。採用と定着を1本の流れとして考えると、次のような積み重ねができます。

  1. 採用サイトに、理念・合わない人・仕事の実際を書く
  2. 見学と面接で、書いたことを現場で確かめてもらう
  3. 入職から1か月・3か月の時期に、「入る前に聞いていた話と違ったこと」を聞く
  4. 聞いた話をもとに、採用サイトの書き方や教育の進め方を直す

3と4をくり返すと、採用サイトは年々「その病院の本当の姿」に近づいていきます。スタッフの声や1日の流れを入れ替えるたびに、次に来る人とのずれも小さくなります。採用の全体の流れ(求人票から定着まで)は「動物病院の採用ガイド」で整理しています。

当社では、採用サイトを作る前に、院長先生やスタッフと「どんな人に来てほしいか」「どんな人とは合わないか」を一緒に言葉にするところから始めています。

動物病院の評価制度、初めての運用でつまずく5つのところと対策動物病院の評価制度を初めて運用するときにつまずきやすいところを、評価項目の決め方、昇給・賞与とのつなぎ方、面談での伝え方、1年目の見直し、採用・定着との関係に分けて、獣医師資格を持つデザイナーが解説します。connectcreate.jp/vdesign/column/animal-hospital-evaluation-system

まとめ

  • 採用のミスマッチは、入職前に思い描いた職場と、入職後の実際がずれることで起きる
  • 採用サイトは応募を増やすだけでなく、合う人を選びやすくする「ふるい」として使える
  • 理念・来てほしい人・合わないかもしれない人を、否定ではない言い方で書く
  • 忙しさや教育の実際は、支える仕組みとセットで正直に載せる
  • 見学・面接では、サイトに書いたことを確かめてもらい、価値観は仕事の経験を通して聞く
  • 入職後に「聞いていた話とのずれ」を聞き、採用サイトに戻すと、定着につながる

まずは、今の採用ページに「病院が大切にしていること」と「合わないかもしれない人」が書かれているかを確かめてみてください。応募そのものが少ない場合は「動物病院の求人に応募が来ない5つの理由と改善策」を、採用サイトの作り方は採用サイト制作のページをご覧ください。

動物病院の採用サイトの効果とは?「打席」と「打率」で考える採用採用サイトを作ったのに採れないのはなぜか。採用を「打席(見に来る人の数)」と「打率(応募する割合・合う人が来る割合)」に分け、それぞれの増やし方と月1回見る数字を、獣医師資格を持つデザイナーが解説します。connectcreate.jp/vdesign/column/animal-hospital-recruitment-marketing

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