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採用

動物病院の採用ガイド|求人票・採用ページ・面接・定着の全体像

(更新:)約15分で読めます

獣医師資格を持つデザイナーが書いています

「求人を出しても人が来ない」「やっと採用できても、すぐに辞めてしまう」。動物病院の採用の悩みは、どこか1か所ではなく、いくつかの段階にまたがっていることがほとんどです。

採用は、求人票を書いてから、入職した人が職場になじむまでの一続きの流れです。この記事では、その全体像を6つの段階に分け、それぞれでつまずきやすいところと、見直すことを短くまとめます。くわしい進め方は、段階ごとの個別記事でご紹介します。

この記事で分かること

  • 動物病院の採用の流れ(求人票→媒体→採用ページ→応募対応→面接・見学→定着)
  • 段階ごとにつまずきやすいところと、見直すこと
  • 紹介会社・求人サイト・自院の採用サイトの役割分担と、手をつける順番

動物病院の採用は「6つの段階」の流れで考える

採用の6つの段階(求人票→媒体→採用ページ→応募対応→面接・見学→定着)と、各段階での求職者の動き

動物病院の採用は、求人票から定着までの6つの段階に分けて考えると、どこで人が離れているかが見えてきます。「応募が来ない」と感じていても、実際には応募のあとの対応で逃していることもあります。

段階 やること 求職者の動き
1. 求人票 募集の条件と病院の情報をまとめる 条件と雰囲気を見比べる
2. 媒体 求人サイト・紹介会社・ハローワークなどに出す 病院を知る
3. 採用ページ 病院のホームページに採用の情報を載せる 病院の名前で検索して、詳しく調べる
4. 応募対応 応募・問い合わせに返信し、日程を決める 返信の早さと文面で、病院の印象を決める
5. 面接・見学 実際に会い、職場を見てもらう 「ここで働けそうか」を確かめる
6. 定着 入職後の教育と、働き続けられる環境づくり 続けるか、辞めるかを考える

農林水産省の統計では、小動物診療に従事する獣医師は令和6年(2024年)に16,717人で、獣医師の届出者全体(39,664人)の約4割です。人数は増えていますが、近い地域の動物病院どうしが同じ獣医師や愛玩動物看護師を求める場面は少なくありません。

だからこそ、6つの段階のどこかに穴があると、そこから人が離れていきます。まずは自院がどの段階でつまずいているかを知ることが、採用を立て直す一歩目です。

これまでご相談を受けた中では、最初にうかがったお悩みと、実際に見直すところが違っていたことが何度かあります。

ある病院では、先生方がとくに心配されていたのは「求人や採用ページを作っても、だれにも見てもらえないこと」でした。ところがお話を進めると、求人サイトのパスワードが分からない、最低賃金が上がって求人の条件を直したいのに管理している人が別で手を出せない、といった「媒体の管理」で止まっていることが見えてきました。

別の病院では、求人は出していたものの、ホームページの採用ページは募集要項が準備中のまま、応募フォームもなく、電話の問い合わせもほとんどない状態でした。どちらも、媒体を増やす前に整えるべきところがありました。

段階ごとにつまずくところと、見直すこと

6つの段階には、それぞれ「よくあるつまずき」があります。ここでは各段階で見直すことを短くまとめ、くわしくは個別の記事に譲ります。

1. 求人票:条件の羅列で終わっている

求人票は、条件だけでなく「一緒に働く人と雰囲気」が伝わる情報を入れると、比べられたときに選ばれやすくなります。仕事内容・勤務時間・給与だけの求人票は、ほかの病院との違いが見えません。

2025年5月に、人材紹介サービスに登録する動物看護師192名を対象に行われた就業実態調査でも、今の職場を選んだ決め手は「病院の雰囲気・人間関係」が「給与・待遇」を大きく上回りました(数字は「動物病院の求人に応募が来ない5つの理由と改善策」で紹介しています)。

見直すこと

  • スタッフの人数構成・年齢層を書く
  • 院長の考えや、病院が大切にしていることを一文で入れる
  • 休みの取り方・残業の実態を、できるだけ具体的に書く
  • 愛玩動物看護師(2022年5月に法律が施行された国家資格)の募集では、資格の扱いと受験の支援を書く

2. 媒体:どこに出すかを、費用のかかり方で決めていない

媒体は、「どこに出せば応募が来るか」だけでなく、「費用がどうかかるか」とあわせて選びます。紹介会社・求人サイト・ハローワークでは、費用のかかり方がまったく違います(くわしくは後半の「役割分担」の章)。

同じ調査では、出身地と就職先の都道府県が同じ人が72.4%でした。動物看護師は、地元で就職先を探す人が多い傾向があります。

見直すこと

  • 全国向けの媒体だけに頼っていないか
  • 地元の専門学校・大学との関係(実習の受け入れ、学校への求人票の送付)を持っているか
  • 地域名で検索したときや、Googleマップで病院が見つかるか

3. 採用ページ:受け皿がない、または情報が古い

求人サイトで病院を知った求職者は、病院のホームページで詳しく調べます。ここに採用の情報がない、あっても数年前のまま、という状態だと、応募の手前で離れてしまいます。

見直すこと

  • 働く人・雰囲気・1日の流れ・教育・休みが分かるか
  • 職種ごと(獣医師・愛玩動物看護師・受付やトリマー)に知りたいことに答えているか
  • 更新日と、いま募集しているかが分かるか

載せる項目は「動物病院の採用ページに載せるべき項目」で、職種別のチェックリストにしています。

4. 応募対応:返信が遅い・連絡の手段が電話だけ

応募や問い合わせへの返信は、早いほど求職者をつなぎとめられます。求職者は複数の病院を同時に検討していることもあり、返信を待つあいだにほかの病院の見学や面接が進んでしまいます。

見直すこと

  • 応募フォームを置き、電話だけにしない
  • 届いた応募を、だれが・いつ確認するかを決める
  • 返信の文面(お礼・日程の候補・見学の案内)をあらかじめ用意しておく
  • 応募フォームに「何日以内に返信するか」の目安を書き、その日数を守る

返信の文面を用意しておくと、診療の合間でも短い時間で返せます。日程の候補を2〜3つ最初の返信に入れておくと、やりとりの往復が減り、見学や面接までの日数を縮められます。

5. 面接・見学:病院が「選ぶ側」だけになっている

面接と見学は、病院が求職者を選ぶ場であると同時に、求職者が病院を選ぶ場です。条件の確認だけで終わると、求職者は「ここで働く自分」を想像できないまま帰ることになります。

見直すこと

  • 見学では、実際に一緒に働くスタッフと話す時間をとる
  • 1日の流れや教育の進め方を、その場で具体的に説明できるようにする
  • 面接で聞くことを事前に決め、院長以外の人の意見も聞く
  • 合否の連絡をいつまでにするかを伝え、守る

見学で求職者が確かめたいのは、条件よりも「ここで働く自分」が想像できるかどうかです。

当社が採用サイトの写真を選ぶときも、採血のときの獣医師と看護師の連携や、診察の合間の何気ない会話など、働いている様子が伝わる場面を大切にしています。見学でも、そうした場面を見てもらえる時間帯に案内すると、職場の空気が伝わりやすくなります。

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6. 定着:入職してからの数か月を、本人まかせにしている

採用は、入職した人が職場になじんで初めて終わります。同じ調査では、転職経験のある人の転職理由の1位は「職場の人間関係」(49.1%)で、「給与・待遇への不満」(36.8%)を上回りました。また、今の職場への不満では「業務量・負担」(31.8%)、「勤務時間・休日」(28.1%)も多く挙がっています。

見直すこと

  • 入職後に覚えることの順番と、だれが教えるかを決めておく
  • 入職から1か月・3か月など、決まった時期に話を聞く場をつくる
  • 業務の負担が一部の人に偏っていないかを見る
  • 評価や昇給の考え方を、スタッフに説明できるようにする

定着の仕組みは、採用ページで「教育」や「長く働ける理由」として書ける中身にもなります。定着と採用は、別々ではなくつながっています。

動物病院の評価制度、初めての運用でつまずく5つのところと対策動物病院の評価制度を初めて運用するときにつまずきやすいところを、評価項目の決め方、昇給・賞与とのつなぎ方、面談での伝え方、1年目の見直し、採用・定着との関係に分けて、獣医師資格を持つデザイナーが解説します。connectcreate.jp/vdesign/column/animal-hospital-evaluation-system

職種ごとに、採用の進め方を変える

獣医師・愛玩動物看護師・受付やトリマーでは、求職者が重く見ることも、出会い方も違います。6つの段階は同じでも、職種ごとに力を入れるところを変えると、限られた時間を有効に使えます。

獣医師:教育と症例の経験を、具体的に見せる

獣医師の採用では、「この病院でどう成長できるか」を伝えることが中心になります。新卒や経験の浅い獣医師は、教育の体制と経験できる症例を、経験のある獣医師は、任される役割と働き方を見ています。

  • 求人票・採用ページ:診療の範囲、教育の流れ(独り立ちまでの道すじ)、学会やセミナーへの参加の支援、夜間・休日の診療や当直の有無
  • 媒体:大学の求人票、実習・見学の受け入れ、紹介会社(経験者を急いで採りたいとき)
  • 見学:先輩獣医師と話す時間、実際の診療や手術の様子を見てもらう時間をとる

新卒の獣医師は、在学中の実習や見学をきっかけに就職先を考えることも多いため、実習を受け入れることは、そのまま採用の入口になります。

愛玩動物看護師:仕事の範囲と、長く働ける形を伝える

愛玩動物看護師の採用では、「どこまでが自分の仕事か」と「長く働けるか」を分かるように伝えます。2022年5月に国家資格になったことで、資格を持っているかどうか、これから受験するかによって、求職者が気にすることも変わっています。

  • 求人票・採用ページ:資格の扱いと受験の支援、担当する仕事の範囲(診療の補助・保定・入院管理・受付との兼務)、シフトと休みの取り方、産休・育休や時短への切り替え
  • 媒体:地元の専門学校・大学、求人サイト、ハローワーク
  • 見学:同じ職種のスタッフと話す時間をとり、1日の流れを見てもらう

先に触れたとおり、動物看護師は地元で就職先を探す人が多い傾向があります。通勤の経路や、まわりの環境が分かる情報もあると、求職者が「ここに通う自分」を想像しやすくなります。

受付・トリマー:未経験でも始められるかを伝える

受付やトリマーの採用では、動物病院で働くのが初めての人にも分かる言葉で、仕事の中身を伝えます。とくに受付は、医療や動物の仕事が未経験の人が応募してくることも多い職種です。

  • 求人票・採用ページ:未経験からの受け入れと最初に覚えること、仕事の範囲(受付・会計・電話・予約)、トリマーなら1日に担当する頭数の目安と設備
  • 媒体:ハローワーク、地域の求人サイト、スタッフの知り合いからの紹介
  • 見学:受付やトリミング室の様子を見てもらい、飼い主様とのやりとりの雰囲気を知ってもらう

どの職種でも、「その職種の人が読んで、自分のことだと分かる」書き方にすることが共通のポイントです。全職種を同じ文章でまとめると、だれにとっても「自分の話ではない」求人になってしまいます。

紹介会社・求人サイト・自院の採用サイトの役割分担

採用の媒体は、どれか1つを選ぶのではなく、役割を分けて組み合わせます。それぞれ得意なことと、費用のかかり方が違います。

手段 得意なこと 費用のかかり方 向いている場面
紹介会社(人材紹介) 条件に合う人を探して、つないでくれる 採用が決まったときに、1人ごとに手数料 急いで1人を採りたいとき
求人サイト 多くの求職者に病院を知ってもらう 掲載期間ごと、または応募・採用ごと 病院を知ってもらう入口として
ハローワーク 地域で仕事を探す人に届く 求人の申し込みに費用はかからない 地元の人に向けた募集
学校・実習 新卒の獣医師・愛玩動物看護師とつながる 実習の受け入れなどの手間 毎年、新卒を採りたいとき
自院の採用サイト・採用ページ 病院の雰囲気と中身を詳しく伝え、応募を決めてもらう 作るときの費用。作ったあとも残る どの媒体から来た人にも、最後に見てもらう場所として

紹介会社の手数料は、採用した人の年収に対する割合で決まることが多い仕組みです。手数料率の調査の数字と、採用サイトの費用との比べ方は「求人サイトと自院の採用サイトの使い分け」で詳しく解説しています。

役割分担の考え方は、「媒体で知ってもらい、採用サイトで決めてもらう」です。どの媒体から来た求職者も、多くは応募の前に病院の名前で検索します。そのときに見つかる採用サイトがあれば、媒体を変えても、病院の伝えたいことは同じ形で届きます。

何から手をつけるか:おすすめの順番

採用を見直すときは、「求職者が応募を決める場所」に近いところから手をつけると、ほかの段階の見直しが生きてきます。媒体を増やしても、受け皿と応募のあとの対応が整っていないと、集めた人を逃してしまうからです。

その前に、院内で次の4つを話し合っておくと、どの段階を見直すときにも判断の軸ができます。

  • 来てほしい人:職種・経験の有無・病院の考え方に合う人の姿。「だれでもいいから来てほしい」のままだと、求人票も採用ページも、だれにも響かない文章になりがちです
  • 採りたい人数と時期:毎年採るのか、欠員が出たときだけか。毎年採るなら、紹介会社に頼るより、採用ページと学校とのつながりに力を入れたほうが積み重なります
  • 伝えたい病院の良さ:教育・働き方・診療の考え方のうち、ほかの病院と違うところ。スタッフに「この病院の良いところは?」と聞いてみると、院長先生が気づいていなかった答えが出てくることもあります
  • 担当する人:応募の確認・返信・見学の案内を、だれが受け持つか。院長先生ひとりで抱えると、診療が忙しい時期に止まってしまいます

この4つが決まったら、次の順番で進めます。

  1. 応募対応を整える:応募フォームを置き、だれが確認するか・返信の文面を決める。費用をかけずに、すぐできる
  2. 採用ページを整える:職種ごとに知りたいことに答え、更新日と募集中かを書く
  3. 求人票を書き直す:採用ページと同じ内容で、人と雰囲気が伝わる求人票にする
  4. 媒体を見直す:地元に届いているか、費用のかかり方が院に合っているかを見る
  5. 面接・見学の進め方を決める:見学でスタッフと話す時間をとる
  6. 定着の仕組みをつくる:入職後の教育と、話を聞く場を決める

最初の2つは、いま応募が来ていない病院でも、来ているのに辞退が多い病院でも、効果を確かめやすいところです。そのうえで、求人票と媒体を見直すと、変えたことの結果が見えやすくなります。

当社では、採用サイトを作る前に「どんな人に来てほしいか」を院長先生と一緒に言葉にするところから始めています。来てほしい人がはっきりすると、求人票・採用ページ・面接で伝えることがそろい、6つの段階が1本の流れになります。

「来てほしい人」を言葉にするときは、条件より先に、その人に病院でどう過ごしてほしいかをうかがいます。たとえば「何年くらい一緒に働きたいか」「ゆくゆくはどんな役割を任せたいか」「新卒と経験者のどちらに来てほしいか」といった質問です。

ある病院では、この話の中で「10年、15年と長く働き、副院長や次の院長も視野に入れてくれる人」という姿がはっきりしました。 また、院長先生が当たり前だと思っていることの中に、その病院らしさが隠れていることもあります。飼い主様に検査室まで入ってもらい、エコーの画面を一緒に見ながら説明している病院がありました。こうした診療の考え方に共感できる人を思い浮かべると、来てほしい人の姿がまとまっていきます。

まとめ

  • 動物病院の採用は「求人票→媒体→採用ページ→応募対応→面接・見学→定着」の6段階の流れ
  • 応募が来ない・辞めてしまうときは、どの段階で人が離れているかを先に見る
  • 求人票と採用ページには、条件だけでなく「人と雰囲気」を書く
  • 媒体は費用のかかり方で役割を分け、「媒体で知ってもらい、採用サイトで決めてもらう」
  • 手をつける順番は、応募対応 → 採用ページ → 求人票 → 媒体 → 面接・見学 → 定着

まずは、6つの段階のうち、自院で「手が回っていない」と感じるところを1つ選んで、見直すことのリストと照らし合わせてみてください。応募が来ない原因をもう少し詳しく知りたい場合は「動物病院の求人に応募が来ない5つの理由と改善策」を、採用サイトの作り方は採用サイト制作のページをご覧ください。

動物病院の採用サイトの効果とは?「打席」と「打率」で考える採用採用サイトを作ったのに採れないのはなぜか。採用を「打席(見に来る人の数)」と「打率(応募する割合・合う人が来る割合)」に分け、それぞれの増やし方と月1回見る数字を、獣医師資格を持つデザイナーが解説します。connectcreate.jp/vdesign/column/animal-hospital-recruitment-marketing

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