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採用

動物病院の評価制度、初めての運用でつまずく5つのところと対策

(更新:)約11分で読めます

獣医師資格を持つデザイナーが書いています

「評価制度を作ったけれど、初めての評価で昇給額を決めたら、評価の順位と合わないところが出てきた」「面談で何をどこまで話せばいいのか分からない」。動物病院の評価制度は、作るときよりも、初めて運用するときにつまずきやすいものです。

この記事では、評価制度を初めて回す院長先生に向けて、つまずきやすいところと、その手前でできる準備をまとめました。人事制度の継続支援で実際に起きたことをもとにしています。

この記事で分かること

  • 評価制度を初めて運用するときに、つまずきやすい5つのところ
  • 評価の順位と昇給額が逆転したときの考え方と、面談での伝え方
  • 最初の1年で見直すところと、採用・定着との関係

動物病院の評価制度は、どこでつまずきやすい?

動物病院の評価制度でつまずきやすいのは、評価の項目・評価する人ごとの差・昇給や賞与とのつなぎ方・面談・1年目の見直しの5か所です。どれも、制度の書類を作った段階では見えにくく、初めて回したときに表に出てきます。

動物病院の評価制度を形だけにしない1年の流れ。評価の項目を決める、評価する、評価会議で順位を決める、昇給・賞与の額を決める、面談で本人に伝える、1年後に見直す。昇給・賞与の額を決めるところと、面談で伝えるところが、初めての運用でつまずきやすい

つまずきやすいところ 起きやすいこと 手前でできること
評価の項目 項目が抽象的で、評価する人によって読み方が変わる 理念から「求める行動」に落として書く
評価する人ごとの差 甘い人・厳しい人で点数がずれる 評価会議で、根拠になった行動を出し合ってすり合わせる
昇給・賞与とのつなぎ方 評価の順位と金額が逆転する 逆転したところは、理由を言葉にして残す
面談 点数と金額だけを伝えて終わる 見た行動と、次に期待することまで伝える
1年目の見直し 1回目のやり方のまま、2年目に入る 1年回したら、項目・基準・日程を直す

評価制度の目的は、点数をつけることではなく、スタッフが「何をすれば認められるか」が分かり、その行動が病院の中に増えることです。この目的から外れたところで、つまずきが起きます。

評価の項目は、何をもとに決めればいい?

評価の項目は、病院の理念や大切にしている考え方から、「日々の診療でどんな行動をしてほしいか」に落として決めます。「協調性」「積極性」のような言葉だけの項目は、評価する人によって受け取り方が変わり、点数がそろいません。

理念から行動に落とす

たとえば「飼い主様に寄り添う診療」を大切にしている病院なら、次のように行動の言葉にします。

  1. 理念:飼い主様に寄り添う
  2. 求める行動:治療の説明のあとに、飼い主様の不安や質問がないかを確かめている
  3. 評価の項目:説明のあとの確認ができているか(いつも・ときどき・まだ、など段階で見る)

行動の言葉にしておくと、評価する人が「どの場面を見て、その点をつけたか」を話せるようになります。面談のときに伝える材料にもなります。理念や病院の強みそのものを言葉にする方法は、動物病院の理念と強みを言葉にする方法で詳しく書いています。

職種と段階で分ける

獣医師・愛玩動物看護師(国家資格の動物看護師)・受付では、求める行動が違います。全員に同じ項目を当てはめると、職種によって点の取りやすさに差が出ます。項目は職種ごとに分け、さらに経験の段階(入ったばかり・一人で任せられる・後輩を育てる、など)で期待する行動を変えると、昇給の考え方ともつなげやすくなります。

項目を考えるときの手がかりとして、厚生労働省は「職業能力評価基準」を公開しています。仕事に必要な知識や技能に加えて、成果につながる職務行動の例を業種・職種ごとに整理したもので、人事評価や人材育成の目安として使えるとされています。動物病院の職種そのものが載っているわけではないので、考え方の参考にして、自院の言葉に置き換えて使います。

評価の項目を言葉にするときは、いきなり項目の一覧を作るより、院長先生に「最近、この人はいい動きをしているな」と感じた場面をいくつか挙げていただくところから始めると進めやすくなります。場面がそろうと、そこから「何を見て良いと思ったのか」を行動の言葉にできます。

これまでご相談を受けた中には、院長先生と副院長先生が話し合って評価や給与を決めてきたものの、院が増えるのを機に仕組みにしたい、という病院もありました。評価する側にもされる側にも手間が増えることを心配されていたので、最初は小さく設計し、回り始めてから広げる段階的な進め方が合うと考えています。

動物病院の経営理念と強みの見つけ方 本当の価値を言葉にする方法良い診療をしていても、その価値は言葉にしないと伝わりません。獣医師資格を持つデザイナーが、動物病院の経営理念と強みを、院長・スタッフ・飼い主様への聞き取りから見つけ、ホームページや採用、院内で使う方法を解説します。connectcreate.jp/vdesign/column/animal-hospital-philosophy-strengths

評価の結果は、昇給・賞与にどうつなげればいい?

評価の結果を昇給・賞与につなげるときは、「評価の順位」と「実際の金額」を並べて見比べ、順番が合わないところには理由を言葉にして添えます。金額を決めるのは院長先生の権限ですが、理由が伝わらないと、評価した人も評価された人も「評価しても意味がない」と感じてしまいます。

評価の順位と昇給額が逆転したら、どうする?

評価の順位と昇給額の逆転は、初めての運用では起こり得ることです。大切なのは逆転をなくすことではなく、逆転した理由を言葉にして、評価した人と本人に伝えることです。

当社が人事制度の運用を支援したある病院では、初めての昇給のときに、評価会議で決めた順位と昇給額が逆になっているスタッフが何人か出ました。理由をたどると、制度ができる前の事情でした。前の職場での経験を考えて入社時の給与を決めていたこと、働き方が途中で変わったことなど、院長先生が一人ひとりの事情を見て給与を決めてきた積み重ねが、新しい制度の順位とずれていたのです。

院長先生の判断そのものには理由があります。ただ、その理由が言葉になっていないと、複数の先生で時間をかけて評価をつけた側からは「自分たちの評価が反映されていない」と見えます。初めての運用で説明ができないと、翌年からは評価が形だけになり、制度が回らなくなります。

そこで、次の順で進めました。

  1. 昇給額の案ができたら、評価の順位と並べた一覧を作る
  2. 順位と金額が逆転しているところに印をつける
  3. 逆転しているところごとに、理由を1〜2文で書く
  4. その理由を評価した先生方に共有し、納得してもらってから確定する
  5. 本人には、面談で評価の結果と一緒に伝える

金額は、計算の確かめ直しまでが運用

当社が支援したある病院では、評価の順位と昇給額を一覧で見比べたことで、基本給の計算の誤りが見つかりました。等級(役割の段階)が上がったスタッフの昇給額が、ほかの人より低くなっていたのがきっかけです。初めての運用では、表計算の式や元になる給与の数字が古いまま残っていることがあります。給与の支払日から逆算して、少なくとも1週間前には金額を確定できる日程を組み、確かめ直す時間を取っておきます。

昇給と賞与は、役割を分けて考える

昇給は、等級や長く続けてきた行動の評価を反映して、毎月の給与を上げるもの。賞与は、その期の評価や病院の業績を反映して、そのときに支払うもの。このように役割を分けておくと、スタッフに説明しやすくなります。ある病院では、まず昇給から評価を始め、その数か月後に賞与の評価を始めました。一度に全部を始めず、1つずつ回すと、つまずいたところを直しやすくなります。

昇給や賞与のルールは、就業規則とも関わります。労働基準法第89条では、常時10人以上の労働者を使用する使用者は就業規則を作って届け出ることとされ、記載する事項に「昇給に関する事項」や、賞与などの臨時の賃金を定める場合の事項が含まれています。評価制度を入れたり変えたりするときに、就業規則のどこを直す必要があるかは病院ごとに違うので、社会保険労務士などの専門家に確かめてください。

面談では、何をどう伝えればいい?

面談では、点数と金額だけでなく、「どの行動を見てこう評価したか」と「次の1年で期待すること」を伝えます。結果だけを渡されると、スタッフは何を続け、何を変えればいいかが分かりません。

面談で伝える4つのこと

  1. 自己評価と、評価者の評価の差:差が大きい項目から話すと、本人の受け止め方が分かる
  2. 良かった行動:「いつ・どんな場面で」まで具体的に伝える
  3. 次に伸ばしてほしい行動:1〜2つに絞る。多すぎると何も変わらない
  4. 昇給・賞与の理由:評価の順位と金額が合わない場合は、その理由もここで伝える

面談の前に、一人ずつのフィードバック表を用意する

面談で話すことを、事前に一人ずつの表にまとめておくと、院長先生や評価者が話す内容がそろいます。当社が支援した病院では、評価の結果・評価者のコメント・昇給の理由を一人ずつの表にまとめ、院長先生方が全員との面談を期日までに終える段取りにしました。面談の期日を決めておかないと、忙しい時期に後回しになり、結果を伝えないまま次の評価が始まってしまいます。

最初の1年で、何を見直せばいい?

評価制度は、1年回してから直すことを前提にして始めます。最初の1年で見直したいのは、項目の言葉・評価する人ごとの差・日程・逆転の理由の記録の4つです。

  • 項目の言葉:評価する人によって読み方が分かれた項目は、行動の例を足すか、言葉を変える
  • 評価する人ごとの差:甘い・厳しいの傾向が続く人には、評価会議で根拠の出し方をそろえる
  • 日程:自己評価・評価会議・金額の確定・面談のどこで詰まったかを振り返り、次の年の日程に余裕を持たせる
  • 逆転の理由の記録:1年目に書いた理由は、翌年の昇給を決めるときの材料になる。毎年ゼロから考え直さずに済む

もう1つ、評価制度は院長先生のこれまでのやり方と、新しい仕組みのすり合わせでもあります。一人ひとりの事情を見て給与を決めてきた病院ほど、最初の1年は摩擦が出やすくなります。どちらかを捨てるのではなく、院長先生の判断を「理由のついた例外」として制度の中に置いていくと、後を継ぐ先生や評価に加わる先生にも考え方が引き継がれます。

評価制度は、採用と定着にどう関わる?

評価制度は、今いるスタッフが辞めずに働き続けるための土台であり、これから応募する人が病院を選ぶときの材料にもなります。「ここで頑張ると、どう認められるか」が見える病院は、働く人にとって先が見通しやすい職場です。

動物看護師192名を対象にした2025年の就業実態調査では、今の職場への不満の1位は「給与・待遇」(53.6%)でした。一方で、転職経験者の転職理由の1位は「職場の人間関係」(49.1%)で、「給与・待遇への不満」(36.8%)を上回っています。給与の額だけでなく、評価が納得できるか、上司との関係の中で認められていると感じられるかが、定着に関わっていると考えられます。

評価の考え方や、経験の段階ごとに期待すること、昇給の仕組みがあることは、採用ページで伝えられる情報でもあります。具体的な金額まで載せなくても、「どんな行動を大切にし、どう評価しているか」が分かれば、入職後の思っていたのと違うというずれを減らせます。採用ページで何を伝えるかは、動物病院の採用ガイドと採用のミスマッチを減らす方法でまとめています。V DESIGNの採用サイト制作では、病院の理念や働き方を、求職者に伝わる言葉と写真に整えています。

動物病院の採用ミスマッチを防ぐ|採用サイトは合う人を選ぶ道具動物病院の採用のミスマッチは、入職前と入職後のずれから起きます。採用サイトに理念や合わない人、忙しさや教育の実際をどう書くか、見学・面接での確かめ方と定着とのつながりを、獣医師資格を持つデザイナーが解説します。connectcreate.jp/vdesign/column/animal-hospital-recruit-mismatch

まとめ

  • 動物病院の評価制度は、作るときよりも、初めて運用するときにつまずきやすい
  • 評価の項目は、理念から「求める行動」に落とし、職種と経験の段階で分ける
  • 評価の順位と昇給額が逆転したら、理由を言葉にして、評価した人と本人に伝える。伝えないと評価が形だけになる
  • 金額は一覧で見比べ、支払日の前に確かめ直す時間を取る。昇給と賞与は役割を分けて、1つずつ始める
  • 面談では、見た行動・次に期待すること・金額の理由まで伝える
  • 1年回したら、項目の言葉・評価する人ごとの差・日程を見直し、逆転の理由は記録して翌年に使う
  • 評価の考え方が見える病院は、定着にも採用にもつながる

まずは、次の昇給を決めるときに、評価の順位と金額を1枚の表に並べてみてください。採用や定着の全体像は、動物病院の採用ガイドも参考になります。

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