本文へ移動

ホームページ

動物病院の経営理念と強みの見つけ方 本当の価値を言葉にする方法

(更新:)約10分で読めます

獣医師資格を持つデザイナーが書いています

「うちの強みは何かと聞かれても、普通のことを普通にやっているだけで」。ホームページや採用の相談で、院長先生からよく返ってくる言葉です。

けれど、その「普通」の中にこそ、その病院ならではの価値が隠れていることがよくあります。この記事では、動物病院の経営理念と強みを見つけて、伝わる言葉にする方法をお伝えします。

この記事で分かること

  • 良い診療をしていても、病院の価値が伝わっていない理由
  • 経営理念と強みを、院長・スタッフ・飼い主様の声から見つける方法
  • 言葉にしたものを、ホームページ・採用・院内でどう使うか

良い病院ほど、自分たちの価値に気づきにくい

病院の価値が伝わらない理由は、価値がないからではなく、病院の中の人にとって「当たり前」になっているからです。

毎日の診療で続けていることは、院長先生やスタッフにとっては特別なことではありません。たとえば、次のようなことです。

  • 検査の前に、なぜその検査が要るのかを、飼い主様が納得するまで説明している
  • 入院中の動物の様子を、こまめに飼い主様へ伝えている
  • 夜や休みの日の急な相談にも、できる範囲で応えている
  • 新しく入ったスタッフに、先輩が時間をかけて教える文化がある

こうしたことは、外から見ると選ぶ理由になります。それでも、ホームページには「丁寧な診療」「飼い主様に寄り添う」といった、どの病院にも当てはまる言葉しか並ばないことが多いのです。

もうひとつの理由は、設備や診療科のような「機能」は、病院どうしで似てしまうことです。検査の機械や対応できる診療は、地域の病院どうしで大きな差がつきにくいことも多くあります。一方で、院長先生がなぜこの病院を開いたのか、何を大切にして診ているのかという「思い」は、誰ひとり同じではありません。病院の本当の価値は、この思いと、それが毎日の仕事にどう表れているかの中にあります。

ある病院では、エコー検査のときに、飼い主様にも処置室の奥にある検査の部屋まで入っていただき、画面を一緒に見ながら検査を進めていました。動物をお預かりして奥で検査し、結果だけをお伝えする形も多い中で、検査そのものを見てもらうという進め方です。

院長先生は「検査まで見てもらえば、安心していただける」という考えで、日々の診療として続けていました。けれど外から見ると、検査の中身まで飼い主様と分け合おうとする姿勢そのものが、その病院の考え方を表す大きな強みでした。

こうしたことは、ご本人が特別なことだと思っていないほど、言葉になっていないものです。

経営理念と強みは、別のものとして考える

経営理念(なぜ)・強み(何が)・届けたい相手(だれに)の3つがつながると、はじめて伝わる言葉になることを示す図

言葉にする前に、「経営理念」と「強み」を分けて考えると、整理しやすくなります。

  • 経営理念:病院が何のためにあるのか。院長先生が大切にしている考え方(なぜ)
  • 強み:その考え方が、日々の診療や対応のどこに表れているか。飼い主様や求職者から見た、選ぶ理由(何が)
  • 届けたい相手:その価値を、だれに伝えたいのか(だれに)

理念だけでは「立派な言葉」で終わり、強みだけでは「機能の一覧」になります。「なぜ」と「何が」と「だれに」がつながったとき、はじめて伝わる言葉になります。

たとえば「動物と飼い主様の一生に寄り添う」という理念があるなら、強みはそれが表れている具体的な行動です。「子犬・子猫の時期から高齢になるまで、同じ獣医師が続けて診る体制」「最期の時間の過ごし方まで一緒に考える」のように、行動の言葉にします。

院長・スタッフ・飼い主様に、それぞれ違うことを聞く

強みと理念は、院長先生ひとりで考えるより、立場の違う人の声を集めたほうが見つかります。院長先生が話すのは「目指していること」、スタッフが話すのは「毎日の現場」、飼い主様が話すのは「外から見えている姿」だからです。

院長先生に聞くこと

院長先生には、出来事を思い出してもらう聞き方をします。「強みは何ですか」と聞くより、具体的な場面から話してもらうほうが、本音の言葉が出てきます。

  • この病院を開こうと決めたのは、どんなきっかけでしたか
  • 診療で、ここだけは譲れないと思っていることは何ですか
  • これまでで、「この仕事をしていてよかった」と思ったのはどんな場面ですか
  • 10年後、地域の飼い主様にどんな病院だと言われていたいですか

スタッフに聞くこと

スタッフには、働く人の目から見た病院の姿を聞きます。採用で伝える言葉も、ここから多く見つかります。

  • この病院で働こうと決めた理由は何でしたか
  • 飼い主様から言われて、印象に残っている言葉はありますか
  • ほかの病院で働いたことがある方なら、違いを感じたところはどこですか
  • 新しく入る人に、この病院のどこを知ってほしいですか

飼い主様に聞くこと

飼い主様には、病院を選んだ理由と、通い続けている理由を聞きます。院長先生が思っている強みと、飼い主様が感じている強みがずれていることも、よくあります。

  • 初めてこの病院に来たのは、どんなきっかけでしたか
  • 通い続けている理由は何ですか
  • 知り合いにこの病院を紹介するとしたら、何と言いますか

聞くときのコツ

聞くときは、院長先生ではない人が聞くと、本音が出やすくなります。スタッフは院長先生の前では言いにくいことがあり、飼い主様も病院の人に直接は伝えにくいものです。院内のだれかに頼むなら、院長先生以外のスタッフが聞き役になるか、外の人に入ってもらう方法があります。

集まった言葉は、まとめる前にそのまま書き出し、何度も出てくる言葉や場面に印をつけます。立場の違う人から同じ話が出てきたところが、病院の強みの芯です。

  • 獣医師の週休3日を、院長先生は働き方の制度の一つと考えていたが、外から見ると、ほかではあまり見ない取り組みとして打ち出せるものだった
  • 新しく入った人を周りのスタッフが「守りに行く」空気があることが、打ち合わせでの言葉から見えてきた
  • 病院に併設のトリミングで、年齢や健康状態で断らずに受け入れていることが、選ばれる理由になっていた
  • 健診結果をWebで見られるようにしたところ、飼い主様から「動物病院もこうなるんですね」と声があり、新しいことに取り組む姿勢が伝わっていた

言葉にしたら、ホームページ・採用・院内で使う

理念と強みは、言葉にしたあと、使う場面ごとに伝え方を変えて使います。同じ価値でも、飼い主様・求職者・スタッフでは、知りたいことが違うからです。

ホームページ(飼い主様へ)

飼い主様には、強みを「受診したときに何が起きるか」で伝えます。

  • トップページの最初の一文を、どの病院にも当てはまる言葉ではなく、病院の理念を表す言葉にする
  • 「診療の方針」のページで、説明の仕方や、治療を一緒に決める進め方を具体的に書く
  • スタッフの写真と紹介で、どんな人たちが診ているのかを見せる

強みを書くときは、「地域で一番」「ほかの病院より優れた」のような書き方はしません。獣医療広告ガイドラインでも、ほかと比べて優れていることや、実際の内容より大げさに見せる広告は禁じられていると示されています。比べるのではなく、自分たちが何を大切にして、何をしているかを、事実として書きます。

動物病院の広告規制とは?ホームページで使えない表現と言い換え例動物病院の広告規制(獣医療法第17条と獣医療広告ガイドライン)の要点を、獣医師資格を持つデザイナーが原文にそって解説します。ホームページやチラシで使えない表現、言い換えの例、迷ったときの確かめ方までまとめました。connectcreate.jp/vdesign/column/animal-hospital-advertising-rules

採用(求職者へ)

求職者には、強みを「一緒に働くとどうなるか」で伝えます。現役の動物看護師192名への調査では、今の職場を選んだ決め手(複数回答)の2位が「病院の雰囲気・人間関係」(37.5%)で、「給与・待遇」(9.4%)を大きく上回りました(1位は「通勤の利便性」45.8%)。条件だけでなく、病院が大切にしていることと、働く人の姿が伝わることが、応募につながります。

  • 院長先生が大切にしていることを、診療の場面の話として書く
  • スタッフの言葉で、この病院で働く理由を語ってもらう
  • 「こんな人と働きたい」を、理念から言葉にする

採用ページの見直しについては、動物病院の求人に応募が来ない5つの理由と改善策でも詳しく書いています。

動物病院の採用ページに載せるべき項目|獣医師・看護師・受付別動物病院の採用ページに何を載せればいいかを、獣医師・愛玩動物看護師・受付やトリマーの職種別にまとめました。写真と文章の分け方、応募フォームの置き方、よくある抜け漏れまで、獣医師資格を持つデザイナーが解説します。connectcreate.jp/vdesign/column/animal-hospital-recruit-page-checklist

院内(スタッフへ)

院内では、理念を「迷ったときに立ち返る基準」として使います。飼い主様への対応で迷ったとき、新しいことを始めるか決めるとき、「うちの病院はこれを大切にしている」という言葉があれば、院長先生がいなくてもスタッフが判断できます。

朝礼で紹介する、新しいスタッフの最初の説明で伝える、評価の考え方の土台にするなど、言葉を日々の仕事の中に置いておくことで、少しずつ病院の共通の言葉になっていきます。

見た目を決める前に、だれに何を伝えるかを決める

ホームページや採用サイトをつくるとき、色やデザインから考え始めると、どこかで見たようなサイトになりがちです。順番は、まず「だれに・何を伝えるか」を決め、そのあとに見た目を決めます。

当社では、デザインを5つの段階で考えています。土台の「戦略(だれに何を伝え、どうなってほしいか)」から始め、「要件(そのために何が必要か)」「構造(サイト全体の組み立て)」「骨格(ページごとの配置)」と積み上げ、最後に「表層(色・フォント・写真)」を決めます。理念と強みを言葉にすることは、この土台の部分にあたります。

土台が決まっていれば、色やフォント、写真の選び方にも理由が生まれます。「家族のように長く付き合う病院」なら温かみのある色と、スタッフが動物と過ごす自然な写真を。「専門的な診療に力を入れる病院」なら、落ち着いた色と、設備や検査の様子が分かる写真を。見た目は、言葉にした価値を目に見える形にするためのものです。

この考え方は、戦略から作るホームページ・採用サイトのページや、V DESIGNの考え方でもご紹介しています。

まとめ

  • 病院の価値が伝わらないのは、価値がないからではなく、中の人にとって当たり前になっているから
  • 経営理念(なぜ)・強み(何が)・届けたい相手(だれに)を分けて考え、つなげる
  • 院長先生・スタッフ・飼い主様に、それぞれ違うことを聞く。同じ話が出てきたところが強みの芯
  • 言葉にした価値は、ホームページ・採用・院内で、相手に合わせて伝え方を変えて使う
  • 強みは、ほかの病院と比べずに、事実として書く
  • 見た目を決める前に、だれに何を伝えるかを決める

まずは院長先生ご自身が、「この病院を開こうと決めたきっかけ」を、いくつかの文で書き出してみてください。

動物病院のホームページ制作の進め方|目的・ページ構成・公開後の運用動物病院のホームページ制作を、目的の決め方・必要なページ・制作の流れと期間・院長が用意するもの・公開後の更新まで、順を追って解説します。獣医師資格を持つデザイナーが、初めて作る病院にも作り直す病院にも役立つ全体像をまとめました。connectcreate.jp/vdesign/column/animal-hospital-website-guide

出典

ご相談

まずは、今のお悩みをお聞かせください

獣医師資格を持つデザイナーが、直接お話をうかがいます。

LINEで相談する