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動物病院のロゴの作り方|依頼する前に決めることと伝えること

(更新:)約10分で読めます

獣医師資格を持つデザイナーが書いています

開業やリニューアルでロゴをつくることになったものの、「犬と猫が入った、やさしい感じで」と伝えたきり、何案か見比べて選ぶだけになってしまった。そんなお話をうかがうことがあります。

ロゴは、看板・診察券・ホームページ・名刺など、病院のあらゆる場所で長く使うものです。この記事では、形を考える前に決めておくことと、依頼するときに伝えること、受け取ったあとの使い方までを順に整理します。

この記事で分かること

  • ロゴの形を考える前に決めておくこと
  • 動物病院のロゴでよくある形と、それぞれの良し悪し
  • 依頼するときに伝えること・受け取るデータと、決めたあとのそろえ方

ロゴは「病院の考え方」の目印

ロゴは、病院がどんな考えで診療しているかを、ひと目で思い出してもらうための目印です。かわいいかどうか、おしゃれかどうかは、その目的のための手段にすぎません。

飼い主様がロゴを目にするのは、通りがかりの看板、Googleマップの写真、ホームページ、診察券、お薬の袋など、さまざまな場面です。そのたびに「あの、ていねいに説明してくれる病院だ」と思い出してもらえれば、ロゴは役目を果たしています。

V DESIGN では、デザインを「戦略 → 要件 → 構造 → 骨格 → 表層」の5つの段階で考えています。ロゴや色、フォントは、「表層」(目に見える部分)にあたります。その下にある「誰に、何を伝えたいか」が決まっていないと、表層だけを整えても、病院らしさは伝わりません。

病院らしさを決めて、ロゴ・色・写真・言葉の見え方をそろえていくことを、ブランディングと呼びます。ロゴづくりは、その入口です。

形を考える前に決めること

ロゴまでに決める順番の図。病院の考え方(誰に来てほしいか・何を大切にするか・どう感じてほしいか・どこで使うか)、病院名の表記、ロゴの依頼と受け取り、看板・名刺・診察券・ホームページで使い方をそろえる、の4段階

ロゴを依頼する前に、次の4つを院長先生の言葉で書き出しておきます。デザイナーは、この答えをもとに形を考えます。

  1. 誰に来てほしいか:どんな飼い主様に、どんな動物を連れて来てほしいか(地域、家族の形、診る動物の種類など)
  2. 何を大切にしている病院か:診療の方針、強み、ほかの病院との違い
  3. どう感じてほしいか:安心、親しみ、専門性、清潔感など。いくつもある場合は、優先順位をつける
  4. どこで使うか:看板、ホームページ、診察券、ユニフォームの刺しゅう、SNS のアイコンなど

うまく言葉にならないときは、「開業しようと思ったきっかけ」「飼い主様に言われてうれしかったこと」「こういう病院にはしたくない、と思ったこと」を思い出すと、手がかりになります。

また、ロゴと一緒に使う病院名の表記(漢字・ひらがな・英字のどれを使うか、正式名と呼び名)も、ここで決めておきます。

ヒアリングでは、「病院の強みは何ですか」と聞くより、診療の流れを順番にうかがうほうが本音が出てきます。たとえば「検査はどこで、誰が立ち会って行っていますか」と聞くと、飼い主様に検査の様子まで見てもらっている、といった、院長先生にとっては当たり前でも病院の考え方がよく表れていることが出てきます。獣医師同士だと、こうした診療の中身まで踏み込んで聞けます。

動物病院の経営理念と強みの見つけ方 本当の価値を言葉にする方法良い診療をしていても、その価値は言葉にしないと伝わりません。獣医師資格を持つデザイナーが、動物病院の経営理念と強みを、院長・スタッフ・飼い主様への聞き取りから見つけ、ホームページや採用、院内で使う方法を解説します。connectcreate.jp/vdesign/column/animal-hospital-philosophy-strengths

動物病院のロゴでよくある形と、良し悪し

どの形にも良いところと気をつけたいところがあり、正解は病院の考え方によって変わります。よくある形を並べると、次のようになります。

形 良いところ 気をつけたいところ
犬・猫のシルエット ひと目で動物病院と分かる 似た形のロゴが多く、ほかの病院と見分けにくい。犬・猫以外も診る病院では、伝わり方がずれることがある
肉球・足あと 親しみやすく、動物が好きなことが伝わる よく使われる形なので、組み合わせや線の太さなどで病院らしさを足したい
頭文字(イニシャル) 名前を覚えてもらいやすく、すっきり見える 動物病院であることは、文字や色で補う必要がある
地域のモチーフ(山・川・街の名所など) 地域に根ざした病院だと伝わる 地元の人でないと意味が伝わりにくいことがある
ハート・手・植物など やさしさや見守る姿勢を表しやすい 抽象的になりやすく、ほかの業種のロゴと似ることがある
文字だけ(ロゴタイプ) どこに置いても読みやすく、上品にまとまる 印象を残すには、文字の形や色の工夫が要る

形を選ぶときに確かめておきたいことが、ほかに2つあります。

  • 小さくしても分かるか:SNS のアイコンや、ブラウザのタブに出る小さなアイコン(ファビコン)、診察券では、ロゴがかなり小さくなります。細かい線や小さな文字は、つぶれて見えなくなることがあります
  • 十字のマークに注意する:「赤十字の標章及び名称等の使用の制限に関する法律」では、白地に赤十字の標章や、これに類似する記章などを、みだりに用いてはならないとされています(違反には罰則もあります)。医療らしさを出そうとして十字を使うときは、白地に赤い十字や、それに似た見え方にならないよう、色や形に注意が必要です

依頼するときに伝えること

依頼するときは、見た目の好みより先に、「何のためのロゴか」を伝えます。「かわいく」とだけ伝えるより、「初めての飼い主様が、緊張せずに入れる病院だと感じてほしい」と目的で伝えるほうが、デザイナーは形を考えやすくなります。

依頼の前に、次のことをまとめておくと話が早く進みます。

  • 病院名の表記(正式名・呼び名・英字の有無)
  • 前の章で書き出した4つ(誰に、何を大切に、どう感じてほしいか、どこで使うか)
  • 好きなイメージ・苦手なイメージ(参考になるロゴや写真があれば一緒に)
  • 近くの病院のロゴと似せたくない、など避けたいこと
  • いつまでに必要か(看板の発注や開業日から逆算した締め切り)
  • 提案してもらう案の数と、直しの回数
  • 予算

あわせて、契約のときに確かめておきたいのが、ロゴの権利です。できあがったロゴを、看板・印刷物・ホームページ・グッズなどに自由に使えるか、権利をどこまで譲ってもらえるかを、書面で確かめておきます。商標として登録することを考える場合は、似た名前やマークがすでに登録されていないかを、特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)で調べられます。登録の手続きは、弁理士に相談すると安心です。

受け取るデータと、使い方の決まり

ロゴは、画像1枚ではなく、「データ一式」と「使い方の決まり」で受け取ります。看板屋さん、印刷会社、ホームページの制作会社など、渡す相手によって必要な形式が違うためです。

受け取っておきたいデータ

データ 主な使い道
AI(Illustrator の形式)・SVG・PDF(拡大しても粗くならない形式) 看板、のぼり、印刷物、刺しゅう
PNG(背景が透明なもの) ホームページ、資料、SNS
JPG メールでの確認、背景のある画像
色の違うもの(カラー・黒1色・白抜き) 写真の上や、色のついた背景に置くとき
形の違うもの(横長・縦長・マークだけ) 看板、名刺、SNS のアイコンなど置く場所に合わせて

決めておきたい「使い方の決まり」

  • 色の指定:印刷用の色の値(CMYK、特色を使う場合はその番号)と、画面用の色の値(RGB・カラーコード)
  • フォント:ロゴと一緒に使う文字の書体の名前
  • 周りの余白:ロゴの周りに、ほかの文字や絵を近づけない範囲
  • 小さくするときの限度:これより小さくすると読めなくなる大きさ
  • してはいけないこと:縦横に引き伸ばす、色を変える、影や飾りを足す、など

これらを1〜2枚の資料にまとめておくと、あとから別の会社に頼むときも、同じ見た目で作ってもらえます。

データや使い方の決まりがなくて困った例の候補です。

  • ロゴが画像1枚(JPG)しかなく、看板や刺しゅうに使うために、形を描き直すことになった
  • 色の値の指定がなく、看板・名刺・ホームページで、少しずつ違う色になってしまった
  • ロゴを作った会社と連絡が取れず、元のデータを受け取れなかった
  • 背景が透明なデータがなく、写真や色のついた背景の上にきれいに置けなかった

ロゴを決めたら、ホームページ・看板・名刺で使い方をそろえる

ロゴが決まったら、そこで終わりにせず、病院が外に出すものすべてで、色・フォント・ロゴの置き方をそろえます。どこで見ても同じ病院だと分かることが、覚えてもらうことにつながるからです。

そろえる場所の例です。

  • 看板・のぼり・ガラス面のサイン
  • 名刺・診察券・お薬の袋・封筒
  • ホームページ・Googleマップの写真・SNS のアイコン
  • 内覧会や健診案内のチラシ・院内の掲示
  • ユニフォーム・名札

ロゴのデータと使い方の決まりは、院内で置き場所を決め、だれが管理するかも決めておきます。スタッフが院内の掲示をつくるときも、同じデータを使えるようにするためです。

開業の準備の中でロゴを決める時期については「動物病院の開業準備|ホームページ・ロゴ・予約の準備スケジュール」で解説しています。看板やチラシに病院名や診療の内容を載せるときは、獣医療広告のルールも関わります(「動物病院の広告規制とは?ホームページで使えない表現と言い換え例」)。

当社では、戦略+制作プランで、院長先生へのヒアリングやスタッフへのインタビューから病院らしさを言葉にし、配色やフォントに落とし込んでから、ホームページの形にしています。

当社では、色を決める前に「どんな病院だと感じてほしいか」を言葉にし、その言葉に合わせて配色を複数お出ししています。ある病院の採用サイトでは、「温かく、アットホームに」という方向が先に決まっていたので、配色を5つ、それぞれの意図(明るさ、落ち着き、清潔感と温かさのバランスなど)を添えてご提案しました。意図が言葉になっていたことで、話し合いが「好き・嫌い」ではなく「この病院に合うかどうか」で進みました。飾りの形も、温かさが強くなりすぎないよう、配色との組み合わせで決めました。

そのあと院長先生やスタッフに以下のような変化が起こったと聞いています。

  • スタッフが、病院の発信を「この病院らしいか」で考えるようになった
  • 院長先生が「任せた」ではなく「自分たちで作った」と感じてくださった
  • 新しい掲示物やチラシをつくるときに、迷うことが減った

まとめ

  • ロゴは、病院の考え方を思い出してもらうための目印。形より先に「誰に、何を伝えたいか」を決める
  • 依頼の前に、誰に来てほしいか・何を大切にしているか・どう感じてほしいか・どこで使うかを書き出す
  • よくある形(シルエット・肉球・頭文字など)には、それぞれ良し悪しがある。小さくしても分かるか、十字のマークの扱いにも注意する
  • 依頼するときは、好みより目的を伝える。ロゴの権利の範囲も書面で確かめる
  • データ一式(印刷用・画面用・色違い・形違い)と、使い方の決まり(色・フォント・余白・最小の大きさ)で受け取る
  • 決めたら、ホームページ・看板・名刺・チラシで使い方をそろえ、院内で管理する人を決める

まずは「誰に来てほしいか」「どう感じてほしいか」を、院長先生ご自身の言葉で書き出してみてください。

動物病院の開業準備|ホームページ・ロゴ・予約の準備スケジュール動物病院の開業準備で、病院名・ロゴ・ホームページ・Googleマップ・予約・内覧会をいつ決めるかを、獣医師資格を持つデザイナーがスケジュールにまとめました。開業前にホームページに載せることや、予約システムの選び方の観点も解説します。connectcreate.jp/vdesign/column/animal-hospital-opening-preparation

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