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動物病院の広告規制とは?ホームページで使えない表現と言い換え例

(更新:)約14分で読めます

獣医師資格を持つデザイナーが書いています

「ホームページに手術の内容や費用を載せてもいいのだろうか」「飼い主様の声を紹介したいけれど、ルールに触れないか不安」。ホームページやチラシをつくるとき、院長先生からいただくことの多いご相談です。

動物病院の広告規制は、獣医療法と、農林水産省の「獣医療広告ガイドライン」で決まっています。2024年(令和6年)4月に大きく見直され、広告できることが増えた一方で、書き方の条件もはっきりしました。この記事では、原文にもとづいて要点を整理します。

この記事で分かること

  • 獣医療法で「広告」にあたるものと、ホームページの扱い
  • 広告できること・できないことの具体例(2024年4月の見直し後)
  • 使えない表現の言い換えの例と、迷ったときの相談先

獣医療の広告は「認められたこと以外は、原則できない」しくみ

獣医療の広告は、法律と省令で認められた事項だけを広告できる、という決まりになっています。

獣医療法第17条第1項では、何人も、獣医師または診療施設の業務に関して、「専門科名」と「学位または称号」を除き、その技能・療法・経歴に関する事項を広告してはならない、とされています。そのうえで、農林水産省令(獣医療法施行規則第24条)で定めるものは、条件つきで広告できます(同条第2項)。ガイドラインでは、誇大な広告で飼い主様を惑わせたり、思わぬ被害を受けたりすることを防ぐための制限だと説明しています。

押さえておきたい点は次の3つです。

  • 「何人も」が対象:院長先生だけでなく、広告を企画・制作する広告代理店や、掲載する媒体の担当者も、指導の対象となり得るとされています
  • 罰則がある:第17条第1項に違反した者は、50万円以下の罰金です(獣医療法第20条)。獣医師の場合は、免許の取消しや業務の停止の対象にもなり得る、とガイドラインに書かれています
  • ほかの法律も重なる:景品表示法(実際よりよく見せる表示を禁じる法律)や医薬品医療機器等法(薬や医療機器の広告の決まり)も、あわせて適用され得ます

2024年4月の見直しで変わったこと

ガイドラインは2023年(令和5年)11月13日付けの通知で全部が改正され、2024年(令和6年)4月1日から施行されています。末尾の一覧によると、新たに広告できるようになったのは主に次の事項です。

  • 獣医師の略歴(勤務した病院と期間など)
  • 専門性の資格(農林水産大臣が指定した団体が認定したものに限る。農林水産省のページでは、公益社団法人日本獣医師会の「認定・専門獣医師協議会」が示されています)
  • 診療の内容(以前は一部の診療だけ)と費用
  • 愛玩動物看護師が勤務していること

あわせて、診療の内容を広告するときは、問合せ先などの4つの事項を併記することが義務になり、病院のホームページもガイドラインで「一定の管理」を図ることになりました。

「広告」にあたるかは、3つの条件で決まる

ガイドラインでは、次の3つの条件をすべて満たすと飼い主様が認識できるものを、広告として扱うとされています。

条件 意味
誘引性 飼い主様を病院へ誘う意図があること
特定性 獣医師の名前や病院の名前が分かること
認知性 一般の人が見られる状態にあること

看板、チラシ、ダイレクトメール、ネットのバナー広告や検索連動型広告(リスティング広告)、動画共有サイト、SNS などが、広告にあたりうる媒体の例です。「これは広告ではありません」と書いても、3つの条件を満たしていれば広告にあたります。写真やイラスト、キャッチフレーズによる暗示的な表現も同じです。

ホームページは「原則、広告にあたらない」。ただし例外がある

誘引性・特定性・認知性の3つがそろうと広告にあたること、病院のホームページは原則として広告にあたらないが、認知性があるとされる例外があることを示した図

病院のホームページは、飼い主様が自分で検索したり URL を入力したりして見るものなので、原則として広告にはあたらないとされています。ただし、次のようなものは「認知性」があると解されています。

  • インターネット広告や、バナー広告とつながっているページ
  • 検索結果で上位に表示されるもの(Q&A では、病院がお金を払って上位に表示されるものは広告にあたる、と説明されています)
  • チラシなどの二次元コード(QRコード)から開くページ(Q&A では、広告と一体のものとして広告にあたる、とされています)
  • SNS で不特定多数に広がるもの

さらに、広告にあたらない場合でも、ホームページで診療の内容を載せるときは、広告に準じて4つの事項(後で説明します)をすべて表示することが望ましく、虚偽や誇大な内容、ほかの病院と比べる内容は厳に慎むべき、とされています。

Q&A でも「広告に該当しても問題ない情報発信をしてください」とくり返し書かれています。広告にあたっても困らない書き方にしておくのが、安心な進め方といえそうです。

採用ページ・SNS・LINE の扱い

  • 採用ページ・求人広告:職員の募集を目的とした求人広告は、飼い主様を誘うものではないため、原則として広告にあたらないとされています(採用ページの見直し方は「動物病院の求人に応募が来ない5つの理由と改善策」へ)
  • 交流型の SNS(「いいね」で広がるもの):不特定多数に広がり続けるため、広告にあたる、と Q&A に書かれています
  • 病院のブログの症例紹介・手術動画:不特定多数に発信されるなら、広告にあたる可能性があります
  • 自分で登録した人だけが見られるもの:Q&A では、メッセージアプリの友だち登録(LINE 公式アカウントなど)がこれにあたり、広告には該当しない、とされています。ただし友だち登録をすすめるときも、適切な情報発信が必要とされています

広告できること(ガイドラインの例から)

広告できるのは、飼い主様が病院を選ぶのに役立ち、客観的に評価でき、あとから確かめられる内容に限られます。主な例は次のとおりです。

事項 ガイドラインの例・条件
専門科名 内科、外科、皮膚科、眼科、歯科、腫瘍科、行動診療科、犬・猫専門科、エキゾチックアニマル専門科など。Q&A では、大学の講座名にない「鍼灸科」「漢方治療科」は広告できないとされています
学位・称号 「博士(獣医学)(○○大学)」のように、授与した大学名を添える
専門性の認定 「獣医師○○(●●認定◎◎専門獣医)」のように、認定した団体を示す。認定元のない「◎◎専門獣医」は不可の例とされています
診療の内容 動物用に承認された医薬品・医療機器などを使う検査や手術(例:椎間板ヘルニアの片側椎弓切除術、白内障の手術)。4つの事項の併記が条件
医療機器 CT、MRI、超音波画像診断装置などの一般的な名前と、台数・導入年。品名や型式番号は対象外
予防・健診など 避妊去勢手術、予防注射、寄生虫病の予防、健康診断、マイクロチップの装着。4つの事項の併記が条件
略歴 卒業した大学、勤務した病院と期間、院長であること

このほか、獣医師免許を受けた日と病院の開設日、病院の名称・所在地・管理者の名前・連絡先、愛玩動物看護師が勤務していることも広告できます。また、技能・療法・経歴にあたらない事項(開設予定日、診療日と診療時間、予約診療、夜間・休日の診療や往診、支払い方法、入院施設、駐車場、ペットホテル・トリミングなど)も、広告できると整理されています。

診療の内容を載せるときの「4つの併記」

診療の内容を広告するときは、次の4つをすべて書くことが求められています。

  1. 問合せ先:広告の内容を問い合わせられる連絡先と、診療後に具合が悪くなったときに対応できる連絡先(診療時間外を含む)
  2. 通常必要とされる診療の内容:診療の流れ、期間や回数
  3. 主なリスク・副作用:良い点だけを強調しない
  4. 費用:標準的な費用。決まっていない場合は、最低金額から最高金額までの範囲を示す

狂犬病の予防注射とマイクロチップの装着では、登録など飼い主様がすることの説明も併記が必要です。また Q&A では、看板などでの併記は一目で分かるようにする必要があり、二次元コードを載せただけでは併記したことにならない、とされています。

広告できないこと:NG表現と言い換えの例

ガイドラインと Q&A に載っている、広告できない表現の例です。言い換えの欄のうち「」で囲んだものはガイドラインの「広告可能の例」の文、「当社案」はガイドラインにはない当社の案です。どちらも、4つの併記などの条件をあわせて満たす必要があります。

使えない表現(原文の例) 理由(原文の説明の要約) 言い換えの一例
どの動物病院よりも安全に手術を行います ほかより優れていると受け取られる(比較広告) 当社案:手術の流れ・主なリスク・費用・問合せ先を並べて説明する
○○さん(著名人)の猫ちゃんも当院の健康診断を受けています 著名人を出すことで優れていると受け取られる(比較広告) 当社案:載せない。健康診断の検査項目を説明する
効果抜群のワクチンを接種します 何を根拠に「抜群」か分からない(誇大広告) 「犬の混合ワクチン扱っています(ジステンパー、パルボウイルス感染症、○○病を予防)。」
当院で行う避妊手術は比較的安全な手術です/手軽に健康診断が受けられます 何と比べて「安全」「手軽」か分からず、客観的な事実と証明できない 当社案:手術や検査の内容と、主なリスク・副作用を書く
パルボウイルス感染症が大流行しています。感染すると死に至ります 流行が客観的に判断できず、不安をあおる(誇大広告) 当社案:流行や重症化の話で不安をあおらず、行っている予防注射を、併記の事項とともに案内する
○○(品名)によるノミ、ダニ予防措置の対応が可能です 薬が特定できる品名は、広告できる対象にならない 「ノミ、ダニ予防措置の対応が可能です。」
健康診断で、ワンちゃんの実年齢測定も追加できます 獣医学的に広く定着した検査と認められていない 当社案:身体検査・血液一般検査・尿検査・糞便検査など、検査項目を書く
○○研究会○○研修コース受講/○○団体推薦獣医師/テレビ出演獣医師 選ぶのに役立つかの判断が難しい 「〇〇大学〇〇研究室 卒業」「〇〇動物病院 〇年勤務」
当病院では、愛玩動物看護師が採血を実施しています 特定の診療行為の広告はできない 「当病院では、愛玩動物看護師とともにチーム獣医療に取り組んでいます。」
今なら○円でキャンペーン実施中!/50%オフ/安価にて/セット割引/健康診断をされた方全員に○○をプレゼント 費用だけの強調や、獣医療と直接関係のないことで誘っている(品位を損なう) 当社案:割引や景品は載せず、診療内容に対して標準的な費用、またはその範囲を書く
犬の去勢手術○○分でできます 手術時間には標準となる目安がなく、誤認させるおそれ(比較・誇大広告) 当社案:時間は書かず、手術の流れを書く
飼い主様の体験談・評判/診療の前と後の写真(ビフォーアフター) 感想や結果は人や動物ごとに異なり、誤認させるおそれ 当社案:広告では使わない
フィラリア症予防薬販売しています 薬を販売していると受け取られる広告は、医薬品医療機器等法に抵触する 「フィラリア症予防のため、月1回経口投与します。」

言い換えのコツは「形容詞を、事実に置き換える」

使えない表現の多くは、根拠を示せない形容詞(抜群・安全・手軽・安価)か、ほかとの比較です。言い換えでは、何を・どのように・いくらで行うかという、あとから確かめられる事実に置き換えます。「安心の手術」と書くより、手術の流れとリスクと費用が書いてあるほうが、初めての飼い主様も判断しやすくなります。

ホームページで気をつけたいページ

次のページは、表現に迷いやすいところです(ホームページ全体のつくり方は「動物病院のホームページ制作」で紹介しています)。

  • 設備・スタッフ紹介:設備は「CT」など一般的な名前で、略歴は卒業大学・勤務した病院と期間で書く。専門性は、農林水産大臣が指定した団体の認定かを確かめる
  • 症例紹介・ブログ:ビフォーアフター写真や、効果を語る書き方は避ける
  • チラシの二次元コードから開くページ:広告と同じ基準で整える(診療の内容を載せるなら4つの事項をそろえる)
  • 病院の名前:Q&A では、「健康チェッククリニック」のように技能・療法にあたる言葉を名前に入れて看板などで広告すると、広告の制限を受ける(4つの併記が必要になる)とされています

獣医師の目で見て、飼い主様に誤解されやすいのは「安心」「痛くない」「日帰りで済む」のように、受け取る人によって意味が変わる言葉です。たとえば「日帰り手術」と書くと、どの子もその日に帰れると受け取られることがありますが、実際は動物の状態や麻酔からの覚め方によって変わります。こうした言葉は、「どんな場合に」「何をするか」を添えて書き直すと、誤解を防げます。

動物病院のホームページ制作の進め方|目的・ページ構成・公開後の運用動物病院のホームページ制作を、目的の決め方・必要なページ・制作の流れと期間・院長が用意するもの・公開後の更新まで、順を追って解説します。獣医師資格を持つデザイナーが、初めて作る病院にも作り直す病院にも役立つ全体像をまとめました。connectcreate.jp/vdesign/column/animal-hospital-website-guide

迷ったときの確かめ方

農林水産省の Q&A では、まずガイドラインをよく読み、それでも判断に困るときは相談するよう案内されています。

  1. ガイドライン本体と Q&A を読む:どちらも農林水産省のページで公開されています(出典を参照)
  2. 都道府県の担当窓口に相談する:病院の所在地の都道府県の、獣医事の担当部署です。農林水産省が窓口の一覧を公開しています
  3. 所属する地方獣医師会に聞く:都道府県と地方獣医師会が連携して説明にあたっている、と Q&A に書かれています

制作会社に依頼している場合は、原稿の段階で一緒に確かめておくと安心です。この記事は、2026年10月時点で農林水産省のページに掲載されている原文をもとにしています。

当社では、ページごとの文章を、記入例と記入欄を並べた表で書いていただいています。箇条書きの数などレイアウトに関わるところはこの段階で決め、語尾などの細かい言い回しは公開の直前まで直せるようにしています。

表現を確かめる段取り ・原稿をいただいた段階で、ガイドラインの原文と照らし、比較・誇大にあたりそうな言葉に印をつけてお返しする ・言い換えの案を2つほど添え、どちらにするかは院長先生に決めていただく ・診療の内容を載せるページは、4つの併記がそろっているかを一覧で確かめる ・判断に迷うものは、公開前に都道府県の担当窓口や地方獣医師会に確かめていただく

まとめ

  • 獣医療の広告は、法律と省令で認められた事項だけができるしくみ。違反には罰則がある
  • 「誘引性・特定性・認知性」の3つをすべて満たすと広告にあたる。ホームページは原則あたらないが、ネット広告・二次元コード・SNS の拡散などは例外
  • 2024年4月から、略歴・認定された専門性・診療の内容と費用・愛玩動物看護師の勤務も広告できるようになった。診療の内容には4つの併記が必要
  • 比較・誇大・体験談・ビフォーアフター・費用だけの強調は使えない。形容詞を、確かめられる事実に置き換える
  • 迷ったら、原文を読み、都道府県の担当窓口に確かめる

まずは、今のホームページの診療案内のページを、4つの併記と NG 表現の表に照らして見直してみてください。

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